2010年 11月 04日
景色、光景、風景、情景
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僕が少年の頃にお爺ちゃんだったので、たぶん今はもう亡くなられているだろうけど、当時70歳を少し越えたぐらいの中版カメラで風景写真を撮っている方で、プリントした僕の写真を見て「ちょっと見せて。」と、ひと言ふた言の言葉を交わして以来、写真屋さんでお会いするたびに写真のことを色々と教えてくださった方だ。
お爺ちゃんが僕に教えてくれたこと...それは、写真を撮る時に必ず、目の前の被写体が「景色」なのか「光景」なのか、それとも「風景」なのか「情景」なのかを考えて撮りなさいということ。その言葉を聞いて、律儀で真面目な少年だった僕は早速家に帰って広辞苑を使って意味の違いを調べてみた。
次に会った時、僕はこの4つの言葉の意味の違いを訊ねると、ただニコニコと笑って答えは戴けなかったけれど、『辞書ではなく自分の頭で考えてみなさい。』とおっしゃるばかりだった。
30年後の今、改めて辞書(大辞泉)で調べてみると...
【景色(けしき)】
《「気色(けしき)」と同語源》
1 観賞の対象としての自然界の眺め。風景。「―がよい」「雪―」
2 陶磁器、特に茶陶の見所の一。頽(なだ)れ・窯変・斑文(はんもん)など、不測の変化の部分をいう。
英:〔ある土地全体の〕scenery; 〔個々の眺め〕a view; 〔限られた一風景〕a scene; 〔陸地の〕a landscape; 〔海の〕a seascape
【光景(こうけい)】
1 目前に広がる景色。眺め。「白銀にかがやく峰々の―」
2 ある場面の具体的なありさま。情景。「惨憺(さんたん)たる―」
3 日のひかり。
英:〔見もの〕a spectacle; 〔見えるもの〕a sight; 〔景色〕a scene; 〔眺め〕a view
【風景(ふうけい)】
1 目に映る広い範囲のながめ。景色。風光。「山岳―」
2 ある場面の情景・ありさま。「ほほえましい親子の―」「新春―」
英:scenery; 〔陸上の風景〕(a) landscape; 〔景色〕a scene; 〔眺め〕a view
【情景(じょうけい)】
心にある感じを起こさせる光景や場面。「幼いころの―を思い浮かべる」
英:〔光景,場面〕a scene;〔眺め〕a sight
辞書で調べる限りは日本語でも英語でもそれぞれの意味が重なり合って、明確な違いはないように思うけれど、30年が経った今、この4つの言葉を言葉本来の持つ意味とは違う写真表現として何となく、でも明確に使い分けているような気がする。
「景色」...それは美しいけれども心を動かされることが少ないもの
「光景」...陰影にストーリー性を感じるけど、傍観者の目で見るもの
「風景」...人は介在しないけれどモノが何かを訴えるもの
「情景」...何かしら心を動かされるもの
写真は見る人によって印象は様々。でも少なくとも「景色」や「光景」ではなく、「風景」や「情景」を撮りたいと思う。
残念ながら今の僕の写真は「景色」と「光景」ばかり。ま、プロと呼ばれる人たちも技術やクォリティは凄くても「景色」と「光景」のレベルな人も多いわけで、頭で考えたり狙ったりせずに「情景」が撮れるようになったら、その道でメシが喰えるようになるんだろうけど...。
好奇心を忘れず、感受性を磨き続けることが一番の早道なのかな?
いずれにせよ、いつかはH.J.F.Rousseauの 「The Sleeping Gypsy」↑みたいに光景のようで情景な、色と光と風が情を醸し出す風情*1ある写真が撮りたいなぁと思う。
*1儚いもの、質素なもの、空虚なものの中にある美しさや趣や情緒を見つけ、心で感じるということ。
by papapaddleraki
| 2010-11-04 15:41
| -写真