2017年 08月 13日
理想のエネルギーミックス
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我が家のN-eco発電所が運用を開始した2008年2月15日から、早くも9年半が経過する。
僕らが太陽光発電を始めた背景には、大災害への怖れと原発へのアレルギーがあって、なるべく電力会社に依存したくないと考えたから。もちろん当時は災害によって長期の停電やエネルギー危機が起きると考えていた人は稀。特にオール電化じゃない太陽光発電のみの導入は"変人の道楽”ぐらいに思われていて、『○○くん、よく考えてみ。この何十年で停電って何回あった?阪神淡路の時だって、電気だけはすぐに復旧しただろ?』なんて、よくご近所さんに笑われたものだった。
原発についても同様に、世界一の安全基準と優れた技術によって運転されているゆえに事故なんて起きるはずがない、"絶対に”安全なのだと言われていた。
そんな風潮の中でもなお太陽光発電を導入する人たちってのは、僕も含め『お金じゃない、心意気(あるいは遊び...笑)なんだ!』的な人たちだったし、正直なところ元が取れるなんてこれっぽっちも考えていなかった人がほとんどじゃないのかな?
ところが、我が家のN-eco発電所が運用を開始して3年後、あの東日本大震災とフクシマの原発事故が起きる。原発の停止、計画停電...絶対だと思われていたことが全然絶対じゃないこと、そして電力会社にエネルギーの全てを依存することの危険さにみんなが気付かされた。そして我が家の導入から遅れること1年9ヶ月、2009年11月からは「エネルギー供給構造高度化法」が施行され、太陽光発電の余剰電力を電力会社が高額で買い取る制度が始まった。
施行時点で運用が始まっていた我が家の買取価格は48円/kWhで、その固定買取期間は120ヶ月なので、我が家も2019年10月でその期限が切れることになる。
では、その後はどうなるのか?
そもそも固定価格買取制度は国が定めたルールによって電力会社との契約で成り立っているんだけど、売電期間が終了すると、このルールの効力は消える。つまりこの期間が終了すると電力会社は買取義務がなくなることになるのだ。
もちろんあくまでも"義務がなくなる"のであって"買い取らなくなる"ということではなく、期間終了後の売電については売る側(僕)と買う側(電力会社)の同意のもと価格を再設定して継続して売買を続けるようになるはず。
ただ、一応は私企業である電力会社が固定価格買取期間終了後、(新電力会社との競争はあるとはいえ)売電価格が買電価格を上回ることは常識的にありえないわけで、そうなれば発電した電気を可能な限り自家消費した方がお得になりそうだ。
太陽光発電導入前の2002年から2007年の電気代はアベレージで175,420円/年で、直近の2016年は74,276円/年。つまり我が家の場合、太陽光発電導入で電気代が101,144円減ったことになる。
加えて、電力会社から支払われる売電収入が184,704円(2016年)あるので、意識の高まりや家族の減少による消費電力量の減少を含めて合計で285,848円の節約が出来たことになる。
我が家の太陽光発電システムの初期導入費用298万円。この金額で割り算してみると...
2,980,000円÷285,848円=10.42年(10年5ヶ月)
つまり、導入から10年5ヶ月経過する来年の8月には初期費用を回収することが出来るということだ。初期費用の回収が2018年の8月、そして奇しくも固定買取期間の終了が同年10月。
こうなると次は...
可能な限り自家消費するためには、発電が出来ない時間帯を考慮し、昼間の余った電力をプールしておく...つまり蓄電システムの導入が視野に入ってくるんだけど、蓄電システムはなかなか価格が下がらず。
実際、2016年の我が家の売電収入は184,704円で、仮に現在最も安価(...になる予定)のTesla Powerwall2(13.5kWh)でさえも、予約価格617,000円(税込)+工事費101,000円~253,000円=72~82万円。我が家の場合、売電が20kWhを超える日が多いのでPowerwall2が2台(27kWh)は必要。
単純に計算しても、Powerwallを2台導入するのに144~164万円が必要で、それによって得られるメリットは固定買取終了後の買取価格と買電価格の差額分(仮に買取価格が20円/kWhになったら、現在の買電平均値22.3円との差...つまり3,835kWh×(22.3円−20円)=8.820円)でしかないし、(太陽光パネルと周辺機器が故障や劣化しなかったと仮定しても)、初期費用をペイするのに150年から185年必要ってこと。(蓄電システム自体がそんなに保たないから絶対に元が取れない...苦笑)
しかも僕が20~30代ならともかく、老い先短い今、「EPT」(Energy Payback Time=エネルギーペイバックタイム)の長いリチウムイオン蓄電池を導入することがエコロジーに繋がるのかといえば、たぶんその答えはNo。(*太陽光パネルや蓄電池は膨大な鉱物資源と化石燃料を使って作る工業製品で、太陽光発電の発電装置自体が、資源や化石燃料なしには作れない...つまり発電に使う燃料はゼロでも、設備を作るのに膨大な火力の電気を使うわけで...発電中の燃料がゼロだから地球に優しいというのは、電気自動車のCO2排出がゼロって言うのと同じ欺瞞だと思うし。)
要するに巷で話題の蓄電システムはあくまでも安い深夜電力で充電し、電気が高い昼間に放電させる"オール電化的"(=原発肯定推進型)の場合に有利になるものであって、僕のように自分ちで作った電気で暮らしてみようという"オフグリッド的"(=原発否定型)にとっては蓄電システムはエコロジカルでもエコノミカルでもないってことなのだ。
でも!
コストパフォーマンスが悪くても、地球に優しいってのが欺瞞だとしても、電力会社から独立して限りなくオフグリッドに近い状態で暮らすのはある種の"夢”。ここまで長々とお金という単位で太陽光発電と蓄電システムを語ってきて、ここでお金じゃないんだ!って言っても何の説得力もないけれど、ま、要するに自己満足でしかないわけだとしても(エネルギーゼロにするために一番良い方法は、僕がこの世からいなくなることなわけで...非常に悩ましいところ。)、電力会社に依存せずに自主自立で暮らせたら、それは奇人変人にとってはとても有意義なこと。
ただ、用途別/エネルギー別消費のグラフを一般家庭と我が家を比べると、その違いは一目瞭然。エネルギー総量はふたり暮らしだとは言え、母屋191.45㎡(57.92坪)+ガレージ37.21㎡(11.2坪)=延床総面積228.66㎡(69.12坪)あるのでやや多め(平均120㎡=36.4坪)だけど、電気は完全自給(連係による差し引きではあるけど...)、暖房は100%薪、給湯の85%を太陽熱で...調理用ガスコンロと冬季の給湯の一部でLPガスに8%だけ依存する以外の92%が再生可能エネルギーで暮らせている今、蓄電システムを導入せずとも我が家のエネルギーミックスはかなり理想に近づいてきてはいるんだけど...ね。
by papapaddleraki
| 2017-08-13 21:47
| -ソーラーパワー