2017年 08月 01日
The Nature Fix
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ともちゃんに思いっ切りバカにされながら、こんな本を読み始めた。(...とはいえ、旦那をミーちゃんハーちゃん呼ばわりしておきながら、自分だって市立図書館のオンライン蔵書検索してたくせに!...苦笑)
「The Nature Fix〜自然が最高の脳をつくる」(Florence Williams著/NHK出版)
若い頃だったら新聞広告に出てる本は意地でも読まないぐらいの気概があったものだけど、朝刊の広告を見て、その場でAmazonさんでポチッとして、翌朝届いて読み始めたりするようになってしまった僕。
年を取るってのは安直になるってこと。もしかしたら老化ってこういう何てことないところから始まるのかもしれないな...なんて自分に呆れつつ苦笑いしながらも、ともちゃんに横取りされるないよう、彼女が同窓会に行ってる間に読み切らなくっちゃ!って3日間常にバッグに入れて持ち歩いて「The Nature Fix」読了。
もちろん私立文系の僕には、その根拠となる論文の信頼性や統計の正確さを検証する術もヒマもないゆえに、100%信用するのはやや危険な気もするけれど、読み進めるほどに、平均的日本人よりも自然の中で過ごすことがやや多い僕だからこそ思い当たる事例が多く...たぶんココに書かれていることは、真理に限りなく近いのだろうと思うに至ったのだ。
...って、いつの間にやら下手な翻訳みたいな文体を書いてるし(笑)
正直、内容はスゴい。でも翻訳がヒドい(笑)
傍で見ていたともちゃんによれば、僕と暮らし始めて32年になるけど、僕が本を付箋だらけにして読書してる姿や、やや速読派(アベレージで250ページ/1h程度)の僕が400ページ足らずの本と3日も格闘してる姿は初めて見たとのこと。
ほぼ全てのチャプターが読み応えのある内容だけど、その中でも僕が付箋を付けた部分の一部を紹介してみる。
白血球の一種であるNK細胞は全身をめぐり、腫瘍やウィルスに感染した細胞に「自己破壊せよ」というメッセージを送る。このNK細胞の数がストレス、加齢、農薬といった要因により一時的に減少することは、かなり前から知られていた。そこで李は、自然がストレスを軽減するのであれば、NK細胞を増やすことができるのではないかと考えた。そうなれば感染症やがんと闘う力になるはずだ。
この答えを求め、2008年、李は東京在住の中年のビジネスマンの一団を森に連れていき、三日間、二〜四時間ほど森のなかをハイキングしてもらった。三日後に血液検査を実施したところ、ビジネスマンたちのNK細胞が40%も増大していることがわかった。さらにその後も七日間、NK細胞が増えた状態は持続した。一ヶ月が経過しても、NK細胞の数は森ですごす前よりも15%も多かった。いっぽう、同様に三日間、都会で散歩してもらったところ、NK細胞の数に変化は見られなかった。(P45)
スタンフォード大学の神経科学者ダニエル・レヴィティンは著書の中で、人間の脳の処理能力は120ビット/秒で、信じられないほど遅いと述べている。ちなみに自分に話しかけている相手を認識するには、60ビット/秒を要する。方向性をもった注意、すなわち自発的注意とは、限りある資源のようなものだ。その資源が減れば、わたしたちはミスを犯し、怒りっぽくなる。そのうえ近年はマルチタスカーが増え、ひとつの仕事から次の仕事へとせわしなく注意を向ける対象が替わる。脳の前頭前野などの部位では、グルコース(ブドウ糖)が酸素と反応し、エネルギーを得ている。ところがマルチタスクを続けていると、このエネルギー源を消費しつくしてしまうのだ。すると認知機能を駆使したり体を動かしたりするエネルギーが足りなくなり、脳がうまく機能しなくなる。広々とした場所で蝶を眺めていると、気分が落ち着いてくるのも不思議はない。もちろん自然のなかにいても脳は働きつづけるが、機能するのはマルチタスクに必要な部位ではない。この点が重要な鍵を握っている。(P66)
目は乾いているだけではない。家にこもり、戸外の空間や陽射しを楽しまずにいると、目のなかで不穏な変化が生じる。中国での調査でそれはあきらかになっている。田舎に暮らす人と比べて、都市部に暮らす裕福な人たちの近視率は二倍に達したのだ。上海では高校生のなんと86%が眼鏡を必要としている。またオハイオ州、シンガポール、オーストラリアで実施された最近の研究によれば、近視の人と近視でない人のほんとうの違いは、戸外ですごす時間の長さだということだ。日光が網膜にドーパミンの放出をうながし、その結果、眼球が楕円体になりにくくなるからだという。屋内と屋外の光は性質がまったく違う。曇りの日でさえ、屋内より屋外のほうが10倍も明るく、広範囲のスペクトル(波長域)の光が存在する。教育関係者はこうした問題をなんとか解決しようと、自然光に近いフルスペクトルの照明を教室に設置したり、天井をガラス張りにしたりしている。
だが、もっとよい解決策がある。それは、外に出ること。(P175)
「われわれの実験の結果は、都会の広大な公園(五万平方メートル以上)と都会の広大な森林地が、都市部の住民のウェルビーイングに、とりわけ中年女性の健康によい影響を及ぼすことを示している」という結論の論文が『環境心理学ジャーナル』誌に掲載された。この結論はトュルヴァイネンがそれ以前に「一ヶ月に5時間自然のなかですごすとストレスが軽減される」と推奨した結論を裏づけている。また彼女らは、自然に触れる時間の長さとの関係にも着目している。自然のなかですごす時間が長くなるほど、気分が明るくなるからだ。確実にストレスを軽減し、うつうつとした気分に風穴をあけるには「自然のなかで一ヶ月に5時間すごすのが最低ライン。10時間すごせば、ますます爽快な気分を味わえるはず」とトュルヴァイネンは言う。
わたしはざっと計算してみた。一ヶ月に5時間ということは、一回あたり30分程度を週に2回、青々とした木々の下ですごせばいい計算になる。一ヶ月に10時間を達成するには、一回あたり30分程度を週に5回、自然のなかですごさなければならない。さもなければトュルヴァイネンの同僚の「一ヶ月に二、三日都会を離れれば、同じ効果が得られますよ」というアドバイスに従うかだ。(P191)
グラスゴー大学のイングランド人の疫学者、リチャード・ミッチェルはこうした格差社会の問題に取り組んでいる。フィンランドや日本で行なわれている自然に関する研究は、中産階級を対象にしているが、ミッチェルが目を向けているのは疲弊しきった低所得者層だ。彼は長年、アルコール依存症と肥満の予防に役立つ提言ができればと努力してきた。だがいまは、環境そのものに着目している。なぜ健康な人が多い地域と、そうではない地域があるのだろう?そう疑問に思っていたところ、あるオランダの研究に触発され、彼は緑でおおわれている土地を示す緑被分布図に注目した。オランダの研究により、緑豊かな場所から約800m以内に暮らしている住民は、心身ともに自然から恩恵を受けていることがわかった。糖尿病、慢性疼痛、片頭痛などに悩む人の数が少なかったのである。ミッチェルは、緑豊かな場所と健康増進に相関関係が見られるのは、緑豊かな場所に暮らす住民が身体を動かしているためではないかと考えた。(P203)
ストレイヤーは、自分の子どもたちが幼いころにはボーイスカウトの団員として監督にあたっていた経験からも、教室でパワーポイント片手に教えるよりも、たき火を一緒に囲むほうが生徒たちにははるかにいい勉強になると考えている。「ここにくると、みんな本気で取り組むんだよ」と、ストレイヤーはわたしに言った。「たき火を囲むと、みんな生き生きしてくる」
そう考えたのは、なにもストレイヤーが初めてではない。フランスの哲学者ガストン・パシュラールは、1938年、火は「哲学を生む」と記した。食事の支度をするため、そして暖をとるため、人間はたき火のまわりに集まる。だからこそ、たき火は進化の推進力となった。社交的になれる者、共同体を形成して生活できる者。そしてたき火を囲んで楽しめる者が優位に進化してきたのだ。(P252)
SORAの創始者はアウトドア・スポーツの熱心な愛好者だったわけではない。ただニューロンがあらゆる方面に活発に活動する成長期の子どもたちにとって、ロッククライミング、山登り、カヌーといったアウトドア・スポーツが、このうえなく有効であることに気づいたのだ。「岩棚の上にいると緊張しつつも頭が冴え、ストレスと覚醒のバランスがほどよくとれます。すると生徒の学習意欲が高まりますし、こちらはそれぞれに適した学習方法を見つけることができます。問題を解決する新たな手法が見つかるんですよ。」とはウィルソンの弁だ。
公営住宅の窓から見える景色の研究で有名なイリノイ大学のフランシス・クオはADHDと戸外での活動の関係も研究した。彼女の研究は小規模ではあったものの、じつに示唆に富んでいた。ある実験で、ADHDの子どもが室内ですごした場合と自然のなかですごした場合を比較したところ、自然のなかですごすとADHDの症状が三分の一に減るとわかった。べつの実験では、8歳から11歳のADHDの子ども17人に、ガイドと一緒に三つの異なる場所を20分間歩いてもらった。住宅街、都会の繁華街、公園の三か所だ。公園を歩いたあとは、数字を逆の順番で記憶するテストの成績がいちじるしくよくなった。(中略)
2004年の論文で、クオと同僚のアンドレア・フェーバー・テイラーは。注意回復理論が作用するメカニズムに関する仮説を立てた。右前頭前野___物事を系統立てて考え、判断をくだし、作業に集中する際に必要な部位__の働きが、ADHDの子どもの場合はあまり活発ではないうことがわかっている。もし、自然に触れることで前頭前野が力を取り戻すのであれば、ADHDの子どもの注意力も上昇すると思われた。(P304)
ADHDの症状には個人差がある。過激なスポーツを楽しむ選手のように、さまざまな未知のものがうずまく世界で刺激を受けていると元気が出るタイプの子どもは、学校で一日中座ってすごしていると正気を失ってしまう。ところが産業化の時代を迎えると、子どもたちはおしなべて教室で勉強すべきだという標準化教育を、教育界が重視するようになった。「ADHDはいまから150年前、義務教育が始まると同時に生まれたのです」と、カリフォルニア大学バークレー校の心理学者スティーヴン・ヒンショーは言う。「この意味では、ADHDは社会の変化によって生み出された概念といえるでしょう。」(中略)
ワシントン州立大学の神経科学者ヤーク・パンクセップによると、ADHDの治療によく使われているリタリンやアデラルなどの精神刺激薬は、たしかに子どもの注意力や学業成績を改善するのかもしれないが、一時的とはいえ探検したいという衝動を抑える副作用をともなう。「こうした薬はいわば『抗遊び薬』なんだよ」と、彼はいう。「これはまぎれもない事実で、疑いの余地はない」(中略)
アメリカでは640万人の子どもがADHDと診断され、その半数が処方された精神刺激薬を服用し、その割合は2007年から28%も増加しているのだから。(P307)
一番下が日々触れ合うべき自然
二段目が週に一度は行くべき場所
三段目は月に一度辿り着くべき場所
最上段は年に一度行って畏怖の念を覚える場所
そして「1ヶ月に最低5時間を自然のなかで過ごす」ということ。
僕は月に3日、多い時で4日の終日...18〜24時間を三段目から最上段のレベルの自然で過ごしているけれど、ジャンクフードを食べたり、タバコを吸ったりと身体に悪いことも同じぐらいやってるから差し引きゼロなのかな?(笑)
決して長生きしたいとは思わないけれど、自然と触れ合うことで死ぬ直前までハッピーでクリエイティヴで居られたらいいな、とは思う。逆説的に言えば、ハッピーでもクリエイティヴでもない”余生"なら生きていてもしょうがないわけで、さっさとSanzu Riverをフェリーグライドして浄土に行きたいものです、はい。
by papapaddleraki
| 2017-08-01 10:52
| -日常