2016年 08月 27日
至誠動天地
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若い頃の可能性は∞で、望んで、努力をすればどんな人にだってなれると信じてたし、今も基本的にはそう思うようにしているけれども、人生を生きるってことは自分の可能性にひとつひとつ×を付けて行くことでもあって...今、こうして、人生の最終盤を迎えた時、まだ通行止になっていない道が数少なくなって来たのは寂しいことだけれど紛れもない事実だ。
ただ、若い頃、分かれ道で迷い、“たぶんこの先は険しい道だろうな”って想像して(若い頃の少ない経験を基に)、実際に進んでみることなく×を付けた道ってのが結構あって、でも、別の道を進んで峠から自分が歩んで来た道を俯瞰した時に、×を付けた道の方が美しい花が咲き誇り、喉を潤す水場があり、しかも歩きやすいことに気付いてしまうこともあった。
そんな経験を何度かしているうち、僕は想像で道に×を付けるのを止めることにした。
取りあえず、行き止まりになるまで、自分の力で進めるところまで行って、この目で見て、ダメだこりゃ!ってなったら引き返す...そんなことをしてたら目的地に辿り着く前に人生の時間切れになってしまうかもしれない。自分が思い描く理想って山の麓にすら行けないかもしれない。
でもよくよく考えてみれば、この世に生まれた全ての人が同じ山の頂を目指したら、夏休みの富士山みたいに誰かのトレッキングシューズのロゴをずっと見て歩くことになってしまうような気がして...。
登山ってのはピークハントが目的だけれど、それだけじゃなく、登山道から見下ろす景色とか、路傍に咲く高山植物とか、岩陰に踞ってるライチョウの親子だとか...ペースを少し落としてそういうものを愛でることも登山の大きな楽しみなんじゃないかと思うし。
残念ながら才能に恵まれず、苦しいこと、努力することが苦手な僕の人生はピークハントを伴う登山ではなく、山の中をウロウロと徘徊する山歩き。ピークを極めた達成感も、登り切った人だけが見られる絶景も知らないけれど、人知れず岩陰に咲く小さな野の花を誰よりも見られたことを小さな誇りとする人生がお似合いなのかなと思う。
年を重ねたからこそ気付くことがある。
ここ最近、50を超えてから特に痛感するのが、自分のオーラのなさだ(苦笑)。一番身近な存在のともちゃんにも『アナタ、ツマンナイ人ねぇ〜。』って良く言われるんだけど(涙)、とにかく存在感がない。"存在感"というのは"魅力"という分かりやすい言葉に置き換えることも出来るし、“器”とか“濃さ”とか...ま、少なくとも誰かの心に深く刻まれるタイプではないな、という自覚はある。(それを認めることが出来るようになったことは大きな大きな進歩なんだろうけどね...)
若い頃は様々な“欲”があって、僕らの世代の若者の誰もが望んでいたように、会った全ての人の印象に残る、個性的で魅力的な大人になりたいと思っていた。自覚症状は全くないのだけれど、僕が天の邪鬼であること、“変わり者”と言われて嬉しいという心理の奥には、他人と同じことをやってたら&主流派の中で競い合ったら、ほとんどの人に勝つことが出来ないという自らの能力のなさを、若くして自覚していたからなのかもしれないなと思う。
オーラがない、存在感が薄い、魅力がない、器が小さい、そして能力がない...でも僕の周りにはその真逆の“濃い”面々(鬱陶しいぐらいに...笑)がたくさん居て、僕らはそんな人たちに囲まれるように生きている。
フラメンコを止めて、自由な時間が何倍にもなったともちゃんにはよくもまぁこんなに!って呆れてしまうほどバラエティに富んだ新しい友達がたくさん出来て、毎日のように◯◯教室、ワークショップなどなどに出かけて、志と夢のある“濃い”人たちと付き合うようになった。彼女の口から語られる様々なエピソードを聞いているだけで、会ってみたい、話してみたいと思える魅力的な人生を歩む前向きな人たち。
そんな彼らと対照的に“影の薄い”自分。昔々ともちゃんが“まあくんのママ”としか呼ばれなくて悲しそうにしてたのと同じく、いつしか“ともちゃんの旦那さん”以上でも以下でもない自分になってしまっていることに気付く。
このままで良いのかな?と思いつつ、持ち合わせていないオーラを今さらどうすることも出来ないワケで...こうなったら地味で目立たないけれど、魅力に乏しい己の身の程を知って、誠実に(言葉を換えればチマチマと...笑)、自分に出来ることを日々やり遂げるのが、僕の人生に与えられた役割なのかな、と。
ともちゃんの書斎のデスクに折り畳んで置いてあった、1枚の習字。
至誠動天地...究極の誠実さは天地をさえ感動させる。
そうだ、残り少ない人生、この路線で行こう。
あ、でも、得てしてそういうオトコは熟年離婚されやすいタイプなんだそうだけどさ(笑)
by papapaddleraki
| 2016-08-27 10:39
| -雑感