2016年 08月 20日
ゴミを捨てる人 拾う人
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ただ、僕の願いは僕らの遊び場であるフィールドが未来永劫その美しさを保ち、地元の人たちと笑顔で交流が出来る場であり続けて欲しいってことだけだ。
先日久しぶりに訪れた某清流。クルマを停めた対岸にそびえる鋭峰を見上げながら、夫婦でヤマセミを探していたら、朝のお散歩中だという昭和4年生まれ...86歳のお爺ちゃんが僕らに話しかけてきた。
水面に立てられた白い目印が気になったので尋ねると、地元の小学生たちが授業の一環でウナギの仕掛けを沈めたポイントなのだそうだ。
『昔やったらああいうことはしたらアカン決まりやったけどな。川で遊ばんようになってる子供らが川と触れ合う機会を作ってやらんとな。』
お爺ちゃんが若い頃には夜に松明を掲げた川舟に乗って火振り漁でウナギを突いたのだそうだ。
豊かだったこの川の昔話、水害のこと、司馬遼太郎先生のこと...朝のゆったりした時間の中、お爺ちゃんと30分以上立ち話。
そんな中で、お爺ちゃんが唯一表情を曇らせたのが...
『13日やったかな?あそこでキャンプしてた家族連れが居たんや。夕立もあるし、増水したらすぐに流される場所やから“危ないからもうちょっと高い場所にテントを張った方がええ”って声を掛けたんやけど、全然聞く耳を持たんかった。そんで、翌朝、家族連れが帰った後...ホレ、あんな有り様や。』
お爺ちゃんの指さす河原の水際には、安物のBBQコンロと白い大きなゴミ袋3つが放置されていた。
お爺ちゃんは言う。
『わしらにとっては自慢の川やからな、都会の人たちがこの川で楽しそうに遊んでくれてるのは、正直嬉しい。せやけど、こういうことがあると、わしらとは違う目で見る者も出てくる。』
夜が明けて周りを見渡すと、以前はなかった看板がいくつも立っていることに気付く。
「車両以外の占有禁止(キャンプ、食事等)」
「ここでキャンプしないで下さい。」
「近隣に住宅がありますので午後9時以降は
大声で話したり花火をしたりしないで下さい。」
こんな看板があるにもかかわらず、その看板の真横の河原にはいくつかのテントが並び、夜はトイレ前でテーブルとチェアを広げて宴会するグループが居たし(60代〜70代っぽい熟年グループ)、深夜0時に花火をして大騒ぎしている家族も。地元の方々のアドバイスに耳を貸さず危険な場所でキャンプする家族連れ、放置されるゴミ、深夜まで続く騒音...。
さらに始末が悪いのが、これらの迷惑行為を行なう人々が、決してステレオタイプな品のない若者やいかにも育ちや頭が悪そうなタイプではなく、ごく普通の家族連れだということ。実際、深夜に花火をやって大騒ぎしてた、高校生か中学生の娘さん2人とお父さん(おじいちゃん?)の3人は見た目はごく普通で、翌朝僕にシャッターを押して欲しいと頼みに来たりした...つまり罪の意識は全くないってこと!
正直なところ、僕には見た目や風体だけで「ゴミを捨てる人」なのか「ゴミを拾う人」なのかを区別することが難しい。
もちろんこれはこの清流に留まらない。
ムスメとムスメのカレと一緒に行った宮川某支流でも、僕らが“河童の川流れ”のスタートにしていた河原は立入り禁止の看板が立てられていたし、熊野灘の多くの海岸もアプローチ道路が閉鎖されているし、子供たちが小さい頃通った和具の浜も海開きの期間中以外はトンネル手前で進入禁止の措置がとられてしまった(顔なじみのオジサンによると、P泊してゴミを放置する輩が多いことに苦慮して決まった措置らしい)。
そんなわけで、十数年前から僕自身は普段から一緒に遊んで「ゴミを拾う人」であると判っている友達以外、フィールドの場所を尋ねる問い合わせには一切答えないことに決めた。でも、野遊びを最近始めたビギナーな友達のなかには、初めて知ったフィールドの素晴らしさに感動するあまり、深く考えないまま請われるままに場所や遊び方を他の誰かに教えてしまう人がいる。
特に最悪なのは、大人数でしかフィールドに行けないタイプの人たちに伝わってしまうこと...団体行動でしか野遊びが出来ない人たちは総じて意識が低く、往々にして「ゴミを捨てる人」が混じっている可能性が高い(あくまでも“...気がする”だけど)...結果、僕らの大切にしているフィールドはイナゴの大群が通り過ぎた小麦畑のようになってしまう。
仲間とフィールドで過ごす時間はとても楽しい。
でもフィールドのキャパシティを超えるような大人数で押し寄せて、何が正しくて何が間違っているかを考えることなく過ごしてしまうことは、とても怖いこと。その辺がキチンと出来ない...自分の頭で自分が置かれた状況を判断出来ない人は、事故で命を落とす可能性が高いように思う。
不幸な事故が起きると、地元や行政が立入り禁止にしたり、様々な制約が生まれ、さらに未来の子どもたちのフィールドでの経験値が下がり、また事故が起きて...という負のスパイラルが生まれる。
危機管理がキチンと出来ない初めての人たちに軽い気持ちで不完全なアドバイスをすることは大きな罪ですらあると思うのだ(自戒を込めて...)。
フィールドでの感動を誰かに伝えたい!...それはごく普通の感情。でも、それを伝える相手を選ぶこと、あるいは伝える内容に制限を加えることが大切なのかなって...こうしてブログで自分の感動を表現しながら、こんなことを言うのは矛盾でしかないのだけれども。
by papapaddleraki
| 2016-08-20 23:55
| -雑感