2015年 12月 18日
Heel free, feel free
|
そう、いずれの人も、頭の中にはパウダースノーを巻き上げながら独特のテレマークポジションで颯爽とバックカントリーの急傾斜を滑り降りてくる姿が思い浮かんでいるようだ。(それはカヤックをやってると聞いて、鼻栓をしてエスキモーロールでクルンクルン回ってるリバーカヤッカーを連想するのに似ているかも...笑)
ちゃうちゃう!そんなエエもんとちゃう!
僕が始めたテレマークスキーは、ダウンヒルではなく、雪原を歩くためのスキー。
15~16年前に始めたスノーシューを使った雪原トレッキングの愉しみそのままで、ほんの少し楽に行動範囲を広げるための手段という位置付けなのだ。
道具は一般のアルペンスキーと同じく、スキー板とブーツとポール(ストック)の3点。
ウェアは雪山用のハードシェルジャケット&パンツとフリース、ダウンなどのレイヤード。
ザックは雪山用だし、火器はMSRと鍋料理が出来るコッヘル。
スノーシャベル、ビーコン、ゾンデの雪山3点セット...要するに板とブーツだけ揃えると、これまでの雪遊びの装備をそのまま使うことが出来る。
テレマークの板はカカトを固定しないバインディングと、まるで普通のトレッキングブーツのような専用の皮革ブーツを使う。
足元をガチガチに固めるアルペンスキーとは違ってカカトがフリーでしかも柔らかいブーツを履くので、スキーを履いたまま滑りも歩きも軽快に楽しめるんだけど、そのぶん滑りの安定性は最初から放棄することになる。
でも、僕にとって、このスキーはアルペンスキーの代わりではなく、スノーシューの代わりなわけで、高速安定性よりも軽くて自由なことが大切なのだ。
雪原を自由に歩き回るためのスキー...でも真っ平らに見える雪原も、実は多少の起伏があり、たとえヒールフリーであっても水平移動は出来ても登る事は出来ない。上り坂を登るためには別途、滑り止めのシールを貼ることになるけれど、これでは上り下りのたびにいちいちシールを貼ったり剥がしたりしなければならないことになり、起伏の連続する雪原で登ったり滑ったりするような楽しみ方には向かない。
そこで、スキーのソール(裏)にウロコ状の切れ込みを掘って、前には滑るけど後ろには滑らない工夫を施したステップソールと呼ばれるスキー板を履くことになる。もちろんアイゼンが付いたスノーシューのような登攀力はないし、ワックスを充分に効かせたアルペンスキーのようにスムーズには滑らないのだけれど、アルペンスキーより軽くて自由な道具で身軽になって、ゲレンデではない緩やかな丘の続くフィールドをのんびりと歩いたり滑っては休み、気に入った場所でランチして...というスノーシューハイクに滑りを加えたような遊びにはステップソールの入ったテレマークスキーが適している。
滑りが加わるぶん、間違いなく一日の行動範囲は広がって、スノーシューの距離感覚のまま歩いてるとまるで“翼を授かった”ように遠くまで来てしまってる感じがするけど、実際にやってみると登攀性能はMSRのスノーシューには敵わないし、ゲレンデスキーのようにずっと滑り続けることはない。ゆえにスキー技術に関してはアルペンスキーほどの高い技術は必要なく、緩斜面で立木にぶつからずに止まったり曲がったり出来れば、始めたその日から技術レベルに合せて楽しめるのが良いところでもある。
そして、何よりアルペンスキーでコケるのは恥ずかしいし起き上がるのが大変だったりしてネガティヴな“事件”だけど、テレマークスキーでコケてもヒールフリーだからってエクスキューズがある上にカカトが自由なぶん立ち上がるのも楽なので、コケるのがイヤじゃないので、むしろ楽しい“コント”...これはカヌーで沈するのがそんなに大事件じゃなくメンバーの気持ちを和ませる楽しいイベントであるのと似ているような気がする。
ただし!
テレマークスキーを良く知らない人が思い浮べる“テレマークポジションで颯爽とバックカントリーの急傾斜を滑り降りてくる姿”への憧れは、やはり捨て切れず。死ぬまでに出来るようになりたいな、なんて思いつつ、テレマークポジションでのカッコいい滑りよりも、手早く上手に雪洞を掘る技術や、鴨鍋に白ネギを投入するタイミングの方に興味がある、ヒヨッ子テレマーカー50歳の僕である(笑)
Heel free!
自由を謳歌するには、やはり覚悟と努力が必要なようである。
by papapaddleraki
| 2015-12-18 16:35
| -スキー・雪遊び