2010年 11月 03日
Far Eastern Curlew(ホウロクシギ)
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カミングアウトすると、先週から夏の疲れが出たのか体調が今ひとつ(夫婦揃って)。台風の後、宮川の水位もちょうどいいし、風は追い風だし、久々にダウンリバーか?とも思ったけど、ここは無理せず近所でのんびり過ごそうと決める。祝日なのでどこの遊び場も人が多くて楽しめなさそうだし(平日の貸切状態を知ってしまうともう2度と土日祝日に遊びに行こうとは思わない身体に...苦笑)近所で人が少なくてのんびりといえば、バードウォッチング。カリーちゃんに観察&撮影機材と甘いお菓子を積み込んで、あてもなく出発。
Protrek CAJのタイドグラフを見ると、干潮を少し過ぎた頃。じゃぁ干潟の野鳥を見に行こうってことで、海へ。K川を渡った先、名物のたいやきを買うか買うまいか迷いつつ、S海岸を目指す。
対向が出来るほど広い堤防道路をM川河口へ。僕らが子どもの頃、ダムがなかった頃は海に向かって走っても走っても水辺に辿り着けない...見渡す限り延々と干潟が続いていた伊勢湾西岸だけれど、今では一部に残るだけの貴重な存在になってしまった。
潮が引いた今日の干潟は水深数cmのヒタヒタと音がする感じ。水鳥たちが餌を啄ばむには抜群のコンディション!
『あっ、居た!ダイシャクシギ!』
海が見えて数秒で、ともちゃんが干潟を歩くお目当てのシギを発見。逆光で詳細は判らないけれど、影絵でも絶対に見間違わないユニークなくちばし(苦笑)。
堤防道路をウニモグみたいなスピードで走って近づき、窓を開けてファインダー越しにシギを見る。
んん?大きさとくちばしの長さから見てチュウシャクシギではなさそうだけど、ダイシャクシギ(大杓鴫=Eurasian Curlew)なのかホウロクシギ(焙烙鴫=Far Eastern Curlew)なのか?海鳥のことを全然知らない僕にはユーラシアンとファーイーストの違いは全く判らず(苦笑)。
『ま、焙烙*1ってぐらいだから全部茶色なのがホウロクシギなんちゃうのん?』
イイカゲンな判断でホウロクシギってことにしたけど、羽ばたいた時に羽根の裏側が白くなかったのでホウロクシギで正しいようだ。
*1焙烙=(ほうろく)は、素焼きの土鍋の一種。形は平たく、低温で焼かれる。炒鍋(いりなべ)ともいう(wikipediaより)
アンバランスなほど長いユニークなくちばしを干潟の泥に突きたてて、深くに潜むゴカイやカニを器用にキャッチしてモグモグゴックン。円らな瞳を閉じ、頭を逆向きに捻って何だかかなり無理があるアクロバティックな姿勢で突き立てるので、くちばし全てを泥の中に入れた瞬間、ビュッ!と強風に襲われたりするとくちばしを支点にヨタヨタとよろける姿が何ともファニー!(笑)
『ワハハハ...何とも頼りないなぁ。』
ホウロクシギはカムチャツカ半島からオーストラリア大陸に渡って過ごす渡り鳥。ここ伊勢湾には旅鳥として立ち寄ったんだろうけど、途方も無く長い距離を渡る実力者なのに、そんな素振りを見せない可愛い表情とヨタヨタした頼りない感じが魅力的。
その特徴的な姿から、ついついホウロクシギにばかり目を奪われるけれど、秋の伊勢湾岸は野鳥の宝庫。まだ冬鳥には少し早くてこのエリアの主役・ミヤコドリが現れていないというのに、海沿いの駐車場に並ぶのが滋賀、大阪、名古屋、京都...他府県ナンバーのクルマばかりなのには驚かされる。
ホウロクシギを存分に観察した後、堤防を北へ走る。左側の海にはアオアシシギ、イソシギ、カモメたちが、右側の池には無数のカモたちやウーちゃん(鵜)が水面に浮かんでいる(注目はヘラ状のくちばしが可愛いハシビロガモ)。この辺の海辺は空地が多いので、海鳥や水鳥以外の野山の鳥たちも多く生息していて、オレンジのお腹が美しいジョウビタキやモズも至近距離で楽しむことが出来るし、田んぼにはタゲリの群れが羽根を休め、繁みから不意にキジの夫婦が『ヤラセロ!』『昼間っから何言うてんのん、このエロオヤジ!』とか揉めながら(苦笑)飛び出してきて急ブレーキをかけたりして...本当に楽しいエリアだ。
途中のKコンファレンスにあるレストランでちょっと素敵なランチを楽しみ、A川河口まで可能な限り堤防を通ってのんびりドライブの後は、海辺を離れて山間のダム湖へ。ひと気のない湖畔にカリーちゃんを停め、湖面に向けたサイドスライドドアを全開にして飛び交う野鳥を眺めつつ、車内のギャレーでコーヒーを淹れチョコやクッキーをつまみながら“Lake-side Cafe”を開店。
コーヒーを注いだサーモマグを片手に、秋風に揺れる木々の隙間から西日に輝く湖面を眺める。
ともちゃんが鳴らすバードコールに反応して姿を現すメジロ、上空で弧を描いて滑空する白いお腹のミサゴ、木の枝に留まって好奇心満々で車内の僕らを覗き込むハクセキレイ...膝掛けが丁度良いぐらいの穏やかな気温、秋の優しい日射しを浴びながら過ごす豊かで撓やかな時間。
西の稜線に日が沈むまでゆったりと湖畔で過ごし、帰宅までまだ少し時間があったので、ダム湖の下流にある絶景ポイントK渓谷にクルマを停めて渓流沿いを30分ほどお散歩。コンクリート製ながら昭和11年(1936)に架けられた秀麗なアーチ橋とあと10日もすると見事な紅葉が見られそうな渓谷美を堪能した後、僕らは次なる鳥見スポットK池へと向かう。
夕暮れ色に染まったK池で暫し鳥を探してみたけど、バス釣りの釣り人多数で期待したカワセミやオオタカなど野鳥の姿はなかったけれど、茜色の雲を映すK池の湖面はため息が出るような美しさ...何だか得した気分で帰宅の途についた。
この秋に訪れた遠くの第一級の自然が素晴らしいのはもちろんだけど、こうして改めて訪れてみると見慣れた地元の自然もなかなかどうして悪くないものです。
by papapaddleraki
| 2010-11-03 20:43
| -バードウォッチング