2009年 09月 29日
「固定」の意味
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ミクロ的な視点で言えば、11月から「エネルギー供給構造高度化法」が施行され、太陽光発電の余剰電力を電力会社が買い取る価格が1kWh当たり48円となる(期間は10年間)。ただしあまり声高にアナウンスされていないけれど、期間は10年とされているものの、10年間固定48円で買い取ってくれるのは今年度までに導入した人だけで、以下の経済産業省の「買取制度小委員会」の議事録で示されたように毎年買い取り価格の改定が行われ、徐々にその単価が下がっていくいわゆる“尻すぼみ”な政策。
買取開始日 :平成21年11月1日
初年度申込時期 :平成22年3月31日まで
初年度買取単価 :48円/kWh(住宅用)
39円/kWh(住宅用、自家発電設備併設)
24円/kWh(非住宅用)
20円/kWh(非住宅用、自家発電設備併設)
固定買取期間:買取開始月から120ヶ月(10年)
2年目以降単価:毎年「買取制度小委員会」で決定する
(3~5年で半額を目標として毎年見直し&低減。*2年目は42円で合意済)
つまり、今年までに導入した人は48円/kWhで買い取ってくれるけれど、来年導入する人の買取単価は42円/kWhに下がることが確定していて、3〜5年先には半額、つまり24円/kWhに戻すことを「目標」にしているとのこと。確かに僕ら太陽光発電所長のために、太陽光発電を導入していない圧倒的多数の家庭が負担を強いられるということは心苦しいことではあるけれど、エコロジーよりエコノミー志向で導入する人が圧倒的に多い中、買取単価の減額に呼応して導入実績も徐々に減っていくことになりはしないだろうか?つまり今回の太陽光発電需要もかつての補助金制度の時と同じく一過性の現象になって、メーカーの設備投資や販売店の経営拡大の“その後”がとても心配である。
しかしながら、この「エネルギー供給構造高度化法」の施行にともなう買取制度小委員会が行われたのは自民党政権下のことで、今回政権をとった民主党のマニフェストには太陽光発電だけでなく、風力発電などを含めた自然エネルギーの「全量固定価格買取制度」が掲げられている。もちろん、来月に迫った買取制度の施行直前に「全量」固定価格買取を即座に実行することは無理で、事実、直嶋経済産業相も取りあえずは自民党政権下で決定された「余剰電力」固定価格買取制度を予定通りスタートさせ、「全量」固定価格買取制度については「できるだけ早く、議論して制度設計してなるべく2年以内に実行したい」とのことだ。
ただ、この「全量」固定価格買取には致命的な問題がある。
現在、太陽光発電を行う家庭の外部には一般家庭にある買電メーターと太陽光発電専用の売電メーターのふたつのメーターが設置されていて、毎月検診員さんが巡回してその数値を目視で検針している。電気料金はその差額ではなく、買電は他の公共料金と同じく銀行口座から引落しされ、逆に売電は口座に振り込まれるシステムだ。買電は今のままだけど、もし売電が「全量」買取となると、売電メーターには全発電量から自家消費量を差し引いた量しか表示されないために、検針員さんが屋内に設置されているのが一般的な発電モニターをチェックする、あるいは新たに全発電量を表示する正確な外部メーターを設置する必要が生じるのである。
これってどうなんだろ?全国約60万戸とも言われる太陽光発電導入家庭全てを戸別訪問するコスト(毎月検針員のオバちゃんにリビングに入って検針してもらうのはどうなのかな?)、あるいは新たな外部メーターの設置、いずれもかなり大変な作業になるのではないか?
予想に反して(失礼!)マニフェストを粛々と実行しようと取り組んでいる民主党の姿勢にはポリシーとかを越えて尊敬の気持ちを覚えるけれども、「全量」を低く抑えた固定価格買取よりも、「余剰電力」を固定価格買取、しかも3〜5年で価格を半減するような、全然“固定”じゃない固定価格ではなく、他のご家庭に迷惑が掛からない程度の常識的な固定価格で買い取ることを確約する方が“エコノミー”の方のエコで導入しようと考えている家庭にも安心感があって確かなアピールになるのではないか?そんな風に思うんだけど。
どうします、鳩山さん?
by papapaddleraki
| 2009-09-29 23:37
| -ソーラーパワー